第39回:「半導体製造プロセス:日本vs台湾」


 日経マイクロデバイス2003年3月号(144ページ)に
「プロセス特許で日本は台湾に抜かれた」(国立財知氏著)という記事が出てい
ます。読まれましたでしょうか? 今回の探検は、日本がどういうふうに抜かれ
たのかを探るものです。


 調査対象は、権利者が日本および台湾である半導体製造プロセス関連特許(米国分類:438)のもので、成立が1997年から2002年のものです。

 この6年間の成立特許は、日本が約6900件、台湾が約4400件です。

まず、筆頭米国分類から、どのような特許が成立しているのかを見ていきたいと思います。筆頭米国分類とは、特許を分類する際に付与される米国分類コードのうち最初に指定されているものです。これは、その特許の最も大きな特徴を示していると考えられます。また、ひとつの特許について筆頭米国分類はひとつだけですので、全ての特許を重複することなく筆頭米国分類で分けることができ、傾向を把握する際などに用いられます。

 筆頭米国分類集計技術起源年表示、半導体製造プロセスのサブ分類の件数の多いものをみていくことにします。

●日本
438/166:117件:再結晶化
438/151:82件:insulated gate
438/106:79件:パッケージ
438/253:68件:スタックコンデンサ
438/3:67件:磁性、強誘電

●台湾
438/253:235件:スタックコンデンサ
438/238:105件:passive device
438/396:93件:スタックコンデンサ
438/424:93件:トレンチ分離
438/692:86件:CMP

という具合に明確な違いが現れています。
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 では、いつごろに技術起源のある特許が1997年から2002年の間に成立しているのでしょうか?技術起源年vs成立年集計を加工することで次のことがわかりました。
●日本の場合、1993年2月以降に技術起源を持つ特許が1997年から2002年に成立した特許の90%を占めていると推定される。
●台湾の場合、1997年4月以降に技術起源を持つ特許が1997年から2002年に成立した特許の90%を占めていると推定される。

おおざっぱに言って、日本の方が約4年古いアイデアを特許化しているということになります。

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 次に、特許権利化の指標としてクレーム数に注目します。
クレーム数解析を見ると、クレーム数が46以上の特許は
日本が199件に対して、台湾は28件と少なくなっています。
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 次に最近の開発力の指針を得るために、技術起源が98年以降の特許を集計し、その発明人口を調べました。
日本:発明人口=約3600人、筆頭発明人口=約1600人
台湾:発明人口=約2300人、筆頭発明人口=約1100人
となりました。

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  探検隊長より

上記の結果などから、以下のような見解に達しました。
台湾:スピード重視。
そのために、クレーム数を減らして成立を急ぐ。また、米国に先に出願。
(優先権主張を行わない)。これによって、アイデア完成から米国特許成立まで
の時間を約1年短くできる。交渉時に有利になると思われる特許数を確保。
重点分野は、現在、台湾が製造しているデジタルVLSIやメモリに必要な特許

日本:過去の資産を重視。
優先権主張、分割継続を行って過去の資産を育てる。
重点分野は周辺差別化技術。日本の各社が価格競争を行わないですむ得意分野を
育てようとした結果。

全体の印象として、
「プロセス特許で日本は台湾に抜かれた」というより、「住む世界が変わった。
」と感じます。しかしながら、台湾が得意とするデジタルVLSIやメモリは今後も
必須技術となることは間違いなく、その部分がぽっかりと抜けてしまってもいい
のだろうかとも感じます。

 最後に、ちょっと気分が良くなる話をひとつ。
台湾の場合、米国に先に出願しているため、アイデア完成から米国特許成立まで
の時間を約1年短くできます。そのため、日本と比較する場合、時間軸をずらす
必要があります。すなわち、2001年成立の日本の特許数と比較するべきは、
2001年成立の台湾の特許数ではなく2000年成立の台湾特許数だと思われ
ます。そう思って、先の日経マイクロデバイスの記事を見ると、
「まだ、負けていない!」のです。
(でも、これで安心していると、本当に負けてしまいますよ!>日本君)

 次回は再び大学特許に戻る予定です。お楽しみに。


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"T.Yamada" <toyamada@cerbonics.com>まで、いただけましたら幸いです。